ヒト、ネコ、ネズミ…日本列島に最初にきたのは、どの生き物? 国立歴史民俗博物館の常設展がアツい
人類はアフリカで誕生し、長い年月をかけ移動。そして日本列島にやってきた…。そんな歴史はご存じだろう。しかし、ネコやネズミはいつ日本にきたのか? そんな疑問に答えてくれる展示が、国立歴史民俗博物館(以下、レキハク)にある。さっそく見てみよう。
ヒトが日本にやってくる前から生息した、“ネズミ先輩”?
弥生時代、コメを保管した高倉式倉庫。コメを食べるネズミの侵入を防ぐために「ネズミ返し」をつけた…歴史の授業で習った人も多いだろう。
▲ネズミ返しの復元模型とクマネズミの剥製/国立歴史民俗博物館
これは復元された、リアルなネズミ返し。レキハクの第1展示室-先史・古代-の「水田稲作のはじまり」の展示ブースにある。
弥生時代、コメを盗み食いしたのはクマネズミやハタネズミという種らしい。
日本列島には、いろいろな種類の雑食の家ネズミがいる。なかでもこのクマネズミは柱を駆け上ることができる強い足をもち、高床式倉庫に入り込むことができる、身体能力が高い種だった! その対策で、弥生人はネズミ返しを作ったようだ。
このクマネズミ、化石記録やDNA鑑定によるとヒトが上陸する前から日本列島に生息していたらしい。
日本最古のイエネコは、長崎県壱岐で発見された?
日本列島には古くから、野生のヤマネコが生息していたようだ。一方、縄文時代に家畜として飼われたイエネコはいなかったと考えられている。
しかし弥生時代になると、コメを食べるネズミ退治のために大陸からイエネコを連れてきた可能性があるという。
▲日本最古のイエネコ?/模型/弥生時代中期(紀元前3~前2世紀)/国立歴史民俗博物館
日本最古と考えられるイエネコの骨は、長崎県壱岐のカラカミ遺跡から見つかった。推定される時代は、弥生時代中期(※1)。同時期に韓国南部の金海(キメ)貝塚からもイエネコの骨が見つかっているそう。韓国と近い壱岐は、イエネコ文化がいち早く渡ってきたのかもしれない(※2)。
まとめると、日本列島にいちばん早く生息したのはネズミ。その後にヒトが上陸して旧石器時代、縄文時代を経て何千年も後に、弥生人がイエネコを連れてきたというわけだ。今では害獣のイメージが強いネズミだが、実は大先輩であった(※3)。
ちなみに、壱岐で見つかったイエネコ模型のキャプションが面白い。ぜひ見に行ってみてください。
アイキャッチ画像/高床倉庫/模型/国立歴史民俗博物館
取材・文/給湯流茶道(きゅうとうりゅう・さどう)
※1 紀元前3〜前2世紀。
※2 ただし、隣の対馬にはツシマヤマネコがいるので、最終的にはDNA分析をおこなう必要がある。
※3 日本列島にヒトより早くから生息した意味で「先輩」と表現した。
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国立歴史民俗博物館 総合展示
第1展示室-先史・古代-
土器の出現、水田稲作のはじまり、前方後円墳の出現など先端的研究より明らかになった先史時代の新しい年代観を豊富な資料とわかりやすい模型やパネルで紹介する。
展示は、「最終氷期に生きた人々」「多様な縄文列島」「水田稲作のはじまり」「倭の登場」「倭の前方後円墳と東アジア」「古代国家と列島世界」「沖ノ島「正倉院文書」で構成され、今回の弥生時代のネズミ・ネコは、「水田稲作のはじまり」で展示されているよ。