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世界の記憶「上野三碑(こうずけさんぴ)」めぐりと上州ブランド二題④

2023/04/26公開
世界の記憶「上野三碑(こうずけさんぴ)」めぐりと上州ブランド二題④

目次

1 近隣の文化・歴史の予備知識を仕入れに吉井郷土資料館へ

―上州ブランドその一:吉井の火打金

2 藤原不比等の名も刻まれている和銅四年(711)銘「多胡碑」と多胡碑記念館へ

3 上州ブランドその二:剣術の神髄を今に伝える馬庭念流道場

4 日本最古の辛己(巳)年(681年)銘山上碑と山上古墳

5 仏教信仰のすがたを伝える神亀三年(726年)銘金井沢碑



4 日本最古の辛己(巳)年(681年)銘山上碑と山上古墳

寄り道が長くなりましたが本題に戻り、三碑の二番目、山上碑に向かいます。

馬庭駅の高崎寄り一つ手前の西山名駅より北に行くこと約800m、徒歩約20分で山上碑・山上古墳にたどり着きます。駅から道はゆるい上り坂が続き、なるほど「山の上」だと納得します。坂道の最後、石碑・古墳の直下から長く急な階段を上りますので、見学前に一息つきます。まず、石碑の東に隣接して築かれている山上古墳。

 

山上碑への道すがら① みごとに咲き誇る枝垂桜〈C〉


山上碑への道すがら② 「二十二夜」とあるので女性の月待ち講供養塔?〈C〉


山道をたどって最後の階段 天辺に山上古墳が見える〈C〉

 

当地の有力者のお墓として飛鳥時代(7世紀中ごろ)に造営された横穴式石室の円墳。隣の山上碑は、碑文にある一族の縁者黒売刀自(くろめのとじ)がこの古墳に追送された際に建てられたみられる、と説明板にあります。碑文のから古墳の被葬者や築造年代が具体的に分かる、全国的にみても珍しい古墳です。山上碑とともに国指定特別史跡に指定されています。

 

山上碑も覆屋の中に納まり、ガラス越しに見学します。縦長の楕円形面に刻まれた碑文には「母親(黒売刀自)を供養するとともに建立者自身(放光僧長利)の系譜を記」しており、「完全な形で残る碑文として、また日本語順に漢字を記した碑として日本最古である」(多胡碑記念館パンフレットより)。古代の石碑と言えば、為政者や寺院に関わるものとか事績顕彰碑といったものが主流ですが、この碑文からは自分の先祖を手厚く供養しようとする、今につながる庶民の心情といったものが伝わってきて、なにかほほえましい気分にさせてくれます。

他の2碑とは違って造立年が年号ではなく、干支で記されていること(つまり年号使用が定着する「大宝元年〔701〕以前)が、この石碑の古さを物語っています。

 

山上古墳 直径15m、高さ5mの円墳

石碑に刻まれている佐野三家にゆかりの首長墓


山上碑の覆屋


山上碑碑文(高崎市教育委員)


「山上碑及び古墳」説明板(高崎市教育委員会)


山上碑横の石塔群 これも古さを感じさせますね


山上古墳から北に延びる「石碑(いしぶみ)の道」

この山道をたどれば約1時間で金井沢碑にたどり着きます



*次頁 5 仏教信仰のすがたを伝える神亀三年(726年)銘金井沢碑




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