同潤会アパートと渋谷:2 /白根記念渋谷区郷土博物館・文学館
美術館とお寺と猫
2023/04/25公開
「同潤会」とは、関東大震災の後、耐震性や耐火性の高い鉄筋コンクリート住宅を広く市民に供給するため設立された、内務省肝いりの法人組織。関東大震災から今年で100年めを迎えることが、本展開催の背景にはある。
同潤会の事業はアパート以外にも、宅地開発や住宅の分譲のほか、社員寮の造成を受託したり、スラム街に低所得者向けの共同住宅を提供したりと手広かった。同潤会の活動を落としこんだマップには、都心部から川崎・横浜あたりに点がびっしり。
同潤会のアパートメントハウスは、都内に13、神奈川に2か所あった。
そのなかでも、代名詞といえる表参道の青山アパート(2003年解体)、とくに大規模であった代官山アパート(1996年解体)はいずれも渋谷区内にあり、解体前の記録や解体後の部材が区によって保存されている。
渋谷区立の博物館で本展が開かれるのはそのためであり、展示資料は青山、代官山のものを中心に、唯一の女性単身者向けアパートだった文京区の大塚女子アパート(2003年解体)のものを加えるなどして構成されている。
青山アパートが同潤会アパートの代名詞となっているのは、単に立地がよく、目につきやすかったからというだけではない。
当時最新鋭の設備を有したのみならず、建築や内装の意匠が凝っており、デザイン面ですぐれていたためでもあった。本展には往時を偲ばせるタイル、階段の部材、ドアの扉やノブ、据え付けの木製家具といった “残欠” の数々が出品されていた。